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「ネコのにおいがする」


タブレットの映像をローラに見せているところ

「ネコのにおいがする」。先日のスカイプセッションで、ローラがひかるちゃん・蓮水ちゃんに「おうちはどんな音がする?どんなにおいがする?」と質問して出てきた答えが印象的でした。ひかるちゃんの家は扉を開けていると近所のネコが入ってくるのだそうです。ネコが好き?と聞くと、はにかみながら、うんと頷く姿がかわいかったです。そして、蓮水ちゃんが私に「おうちはどんな音がする?」と質問してきたことが突然でびっくりしたけれど嬉しく思いました。傍でセッションを観ているくせに私はどこか他人事で、「自分の家、普段の暮らしではどんな音がするのだろう?」と考え記憶をたどった時にはじめて、私もこの《つうず_れ_る》にちゃんと参加した気持ちになれた気がしました。最初に思いついたのが「お湯を沸かす音」。そして「料理をする音」。「おいしいにおい」。私にとっての《HOME》は食に満たされていて、それが心地良くて好きなのだなと改めて感じます。

 

5月20日午後1時。奈良の町家空間に突如現れた大きなスクリーン。スカイプを使ってカリフォルニアのアーティストと会話をする。100年前の大正時代、ここで暮らした人々はこのような未来を想像したでしょうか。奈良とカリフォルニア、同じ「今」を共有しているのに、ネット回線を通じた向こうはまだ昨日の19日午後9時という時間のズレの不思議。こちらとあちらの私たちが思考を巡らし、言語化し、擬音も交えながら伝わる言葉に変換し、身振り手振りでできる限りの表現で頑張って伝える。日本の暮らしをどうやったらローラに伝えられるだろう?と動画を撮ってきてくれた2人。「襖を開ける音」「畳を歩く音」「風鈴の音」「お寺の鐘の音」など、それぞれの映像と音をローラに届けるべくノートパソコンのカメラにタブレットを近づける姿は、なんとかして日本のこと・私のことを伝えたいという熱心な想いを感じることができたし、その空間と時間はかつてあった日本の暮らしとは想像もつかない文明の発達という、違和感を楽しむこともできました。『アート』と言ってしまうと何だか抽象的でよくわからないものだけれど、そうやって感じた違和感を見すごさず捉える、捉えて何でだろう?と観察する、私だったらどうだろうと考える、言葉や映像・絵・写真・造形など自分なりの表現でカタチにする、そうやって出来上がったものをまた他の人が見たり体感して、これ好きだなとか、なるほどとか、何でこうなったんだろうとか、自分と他者の共通点・相違点を探ること、対話すること、それを面白がることなのかなと思います。意識していたわけではないけれど、人から見たらそういう感想なのか!とか、それは考えたこともなかった!という気づきはとても興味深いし、新しい発見からまた何が生まれるか?何が起こるのか?の連鎖の試みが、この《つうず_れ_る》の企画にはつまっていると思います。

 

これを読んでいるあなたは、今どこにいますか?あなたの《HOME》はどんな音がしますか?どんなにおいがしますか?そしてなぜ、それを思いついたのでしょうか?そこには好きなこと、お気に入りのこと、もしくは困っていること、悩んでいることなど、記憶と一緒に何かしらの感情・感覚がついてくるはず。そしてそれを私は大切に思います。「ネコのにおいがする」ことはネコ好きの人にはうれしいし、嫌いな人には迷惑なこと。この両極端の感想が生まれるのが面白い。私と人は違うのだな、人はみんな違うのだな、その出逢いを楽しむことはとても豊かなことだと思います。写真は20日の朝に私の住む街で見かけたネコと、家でお湯を沸かしているところ。私の街にも奈良とはまた違った古い街並みがあり、ネコがいて、私は沸かしたお湯を水筒につめて家を出る。この景色を歩ける毎日が私は好きです。


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